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桜を追う旅(12)職務質問を受ける

旅行

桜を追う旅(12)職務質問を受ける

桜を追う旅(12)職務質問を受ける

 次の朝、Sさんはお仕事があるので先に出られたが、奥様と二人のお嬢さんに見送られて楽しい思い出のS家を後にする。

 最初新潟に向かったが、途中で気が変わり、寄り道をしないで福島県三春の滝桜に向かった。こういうところが一人旅は気楽で良い。

「上越道」から「磐越道」に向かって走っていたが、カーナビで調べると、ずいぶんと遠回りをしている。もっと近道があるので、一般道に降りて会津若松へ向かう。

 山道にさしかかったところで、急に人が増えて道路に連なっている。皆カメラと三脚を肩に抱えている。よく見ると線路沿いにもカメラをセットした姿が見える。そのうち駅が見えてきた。撮影者の数から、SLでも走るのかと思ったが、ディーゼル機関車だ。だが、客車は昔懐かしいSLに引かれていた車両のようだ。しかしよくは分からない。

それを右手に見ながら山道を走っていたが、まもなく愕然となる。何と道路が閉鎖されて、会津へは抜けられないということが近くに来て判った。カーナビをチェックすると通行止めになっている。それなら何でもっと早く教えてくれないんだよ、と嘆いたが、どうやらある程度詳細にしないと出ないようだ。これはカーナビに対する知識の無さによる大失敗だ。

 そんな不運を嘆きながら、先ほどの鉄道ファンをまた横目で睨みながら来た道を引き返す。

一路滝桜目指して

 1時間ほど遅れてしまった。途中で磐越道に乗る。三春の滝桜の前に立ったのは午後5時20分。陽が傾いていて、上部だけに光が当たっていて、被写体としてはあまりよくない。それでも多くの見物客と1本の桜に圧倒されて1時間ほど周りを歩いたり、ベンチに腰掛けて眺めていた。地元のTV局も中継していた。一番会いたかった桜を見た満足感で気分は高揚していた。

 次の日に行って見る予定の「夏井の千本桜」の地へと向かう。その途中で畑の中にある白い枝垂れ桜を発見。これも見事な姿だった。
 しかし、夏井に向かうには暗くなり過ぎたので、途中にあった大型スーパーの駐車場に戻った。夕食と飲み物と果物を買って、旅行中2回目の「車中泊」に入る。最初運転席に座ったまま眠っていたのだが、目が覚めたのが午後11時。

 さあ、では本格的寝るかと思った瞬間、赤いランプを回すパトカーが後ろを通って行った。周りを伺うとあんなにたくさんあった車が他に1台もない。あれ、もしかしたら自分のことを調べに来たのかなと思ったが、スーパーの裏手の方に行ったので、気がつかずに眠ったふりをしていた。

パトカーは数分後私の車の前をゆっくり通り、ブレーキランプが点いた。

人生初の・・・


 やがて「トントン」と窓を叩く音。今度は間違いなく私のところに来ている。急いでアイマスクを外し、ドアを開ける。

第1声は「どうしました?」である。それは私の台詞だろうとは思ったが、そんなこと言える訳がない。
「何をしてるんですか」よりはいい。急いで名刺を出して「桜を追う旅行をしています。札幌から来ました。」と答えた。

若い警官である。「ホー、桜を追う旅行ですか。ナンバーが札幌なので、それは判りました。」と言いながら名刺を見て、「すみませんが、免許証を見せていただけませんか」と来た。確かに名刺じゃ身分の証明にはならない。

 いろいろ質問をし、メモをしながら「どこの桜が良かったですか」と一応愛想の姿勢も見せる。「それぞれの良さがありますから」と答えると「そうですね」で質問は終わった。「では気をつけて旅行をしてください」とパトカーに戻っていった。

しかし、すぐには発進しなかったところを見ると、相棒の上司に報告をしていたのだろう。間もなくいなくなった。

ほっとして夜空を見上げると、眠りにつく前に西の空に浮かんでいた鎌のような新月が姿を隠していた。


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